[し]
支配人 個人商人、又は、会社の商業使用人で、個人商人又は会社に代わって営業又は事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者(商法第20条、会社法第10条)。株式会社で取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議により(会社法第362条第4項第3号)、持分会社の場合は、定款に別段の定めがない限り社員の過半数をもって決定する(会社法第591条第2項)。支配人は自然人でなければならないと解されている。監査役は、株式会社又はその子会社の支配人を兼ねることができない(会社法第335条第2項)。株式会社又はその子会社の支配人は当該株式会社の会計参与となることができない(会社法第333条第3項第1号)。支配人の代理権に制限を加えても、これを知らない第三者に主張することができない(商法第21条第3項、会社法第11条第3項)。個人商人の営業、又は、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、「表見支配人」として一定の効力が認められる。
支配人を選任した時、及び、支配人の代理権が消滅した時は、登記をしなければならない(商法第22条、会社法第918条)。会社法施行前においては、会社が支配人を置いた時は、支配人を置いた本店又は支店を管轄する法務局において、当該支配人に関する登記をすることとされていたが、会社法の施行により、支店の所在地で登記すべき事項は、商号、本店及び支店の所在場所のみとなり(会社法第930条第2項)、支店に支配人を置いた場合でも全て本店の所在地で登記すべきこととなった(会社法918条)。会社を代表しない取締役と支配人の地位は兼ねることはできるが、会社を代表する取締役と支配人の地位は兼ねることができないので、代表取締役を支配人とする支配人選任の登記申請は却下される(昭和40年1月19日民事甲第104号民事局長回答)。
支払督促 金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより、裁判所書記官によりなされる処分(民事訴訟法(平成8年6月26日法律第109号)第382条)で、旧民事訴訟法(明治23年4月21日法律第29号)に規定されていた「支払命令」に代わる手続。日本において、公示送達によらないで送達することができる場合に限られる。
支払督促の申立ては、原則、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行うが、事務所又は営業所を有する者に対する請求で、その事務所又は営業所における業務に関するものについては、当該事務所又は営業所の所在地を、手形又は小切手にかかる金銭の支払の請求については、手形又は小切手の支払地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行うことができる(民事訴訟法第383条)。
支払督促は、債務者を審尋しないで発せられ、債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる(民事訴訟法第386条)。支払督促の効力は、債務者に送達された時に生ずる(民事訴訟法第388条第2項)。仮執行の宣言前に適法な督促異議の申立てがあったときは、支払督促は、その督促異議の限度で効力を失う(民事訴訟法第390条)。債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、仮執行の宣言前に督促異議の申立てがあったときを除き、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、仮執行の宣言をしなければならない(民事訴訟法第391条第1項)。仮執行の宣言を付した支払督促は、債務名義となる(民事執行法第22条第4号)。債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から30日以内にその申立てをしないときは、支払督促は、その効力を失う(民事訴訟法第392条)。仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法第396条)。「支払命令」と異なり、既判力は無いと解されている。
支払命令 平成8年の改正前の旧民事訴訟法(明治23年4月21日法律第29号)に規定されていた、新民事訴訟法(平成8年6月26日法律第109号、平成10年1月1日施行)における「支払督促」と同趣旨の手続。支払命令は、裁判所の裁判であり、確定すると、確定判決と同一の効力を有し、これには、既判力も含むと解されていた。新民事訴訟法の「支払督促」においては、その権限が裁判所書記官に移譲され、確定すると、確定判決と同一の効力を有するのは同様であるが(民事訴訟法第396条)、既判力は有しないとされている。
自筆証書遺言 遺言のうち、自筆証書をもってするもの(民法第968条)。自筆証書による遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することを要する。費用もかからず、比較的容易に作成することができる反面、要件が満たされず、無効となる可能性も高い。(→公正証書遺言)(→秘密証書遺言)
私文書偽造罪 1.行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造する罪(有印私文書偽造罪、刑法第159条第1項)。3月以上5年以下の懲役に処せられる。
2.1に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造すること(無印私文書偽造罪、刑法第159条第3項)。1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる。
偽造とは、作成名義人でない者が名義を冒用して文書を作成する行為をいう。対象となる文書及び図画は、自己以外の名義で、かつ公務員・公務所名義でもないものに限られる。(→偽造私文書行使罪)(→公正証書原本不実記載罪)
私文書変造罪 1.他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造すること(有印私文書変造罪、刑法第159条第2項)。3月以上5年以下の懲役に処せられる。
2.1に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造すること(無印私文書変造罪、刑法第159条第3項)。1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる。
「変造」とは、文書の名義人でない者が、真正に成立した文書の内容の本質的でない部分に変更を加え、新たな証明力を有する文書をつくりだす行為をいい、本質的な部分に改変を加え同一性を失わせた場合は、「偽造」となる。対象となる文書及び図画は、自己以外の名義で、かつ公務員・公務所名義でもないものに限られる。(→偽造私文書行使罪)(→公正証書原本不実記載罪)
司法書士 司法書士試験に合格した者及び法務大臣による認定を受けた司法書士となる資格を有する者は、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録をすることにより、司法書士となる(司法書士法第4条、第8条第1項)。
司法書士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする(同法第3条第1項第1号〜第5号)。
1.登記又は供託に関する手続について代理すること。
2.法務局又は地方法務局に提出する書類又は電磁的記録を作成すること。
3.法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
4.裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
5.1〜4の事務について相談に応ずること。また、簡裁訴訟代理等関係業務についての研修を終了し、法務大臣が必要な能力を有すると認定した司法書士については、簡裁訴訟代理等関係業務も行うことができる(同法第3条第1項第6号〜第8号、第2項)。
司法書士会 法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに1箇、会則を定めて設置される法人(司法書士法第52条第1項)。司法書士会は、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とする(司法書士法第52条第2項)。 現在、各都府県に1つずつと北海道に4つ、合計50会ある。司法書士登録をするためには、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会に入会する手続きをとらなければならず(同法第57条第1項、第9条第1項)、原則、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、その業務を行うことはできない(同法第73条)。
司法書士試験 司法書士となる資格を与えることを目的として、法務大臣により、毎年1回行われている試験(司法書士法第6条第1項)。受験資格には、何らの制限もなく、国籍も問わない。試験は、1.憲法、民法 、商法及び刑法に関する知識、2.登記、供託及び訴訟に関する知識、3.その他司法書士法3条1項1号から5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力について筆記及び口述の方法により行われる。ただし、口述試験は、筆記試験に合格した者について行われる。司法書士試験に合格した者は、司法書士となる資格を有する(同法4条1項)。
司法書士報酬基準 司法書士の職務の対価に関する基準で、「司法書士報酬規定」と異なり、拘束力は無かった。平成15年4月1日、報酬資格者間の公正な競争を活性化する観点から、司法書士会会則記載事項より「司法書士の報酬に関する規定」が削除され、この「司法書士報酬基準」も廃止された。
司法書士報酬規定 司法書士会会則により、司法書士の職務の対価に関して定められた規定。司法書士の報酬は、この「司法書士報酬規定」に沿って請求することを要していた。独占禁止法の観点から、報酬を‘規定’とすることの賛否が問われ、平成10年7月1日、拘束力のない「司法書士報酬基準」に改められた。
司法書士法人 司法書士が2人以上共同して司法書士の業務を行うために設立される法人。その社員となろうとする2人以上の司法書士が共同して定款を定め(司法書士法第32条第1項)、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する(同法33条)。主たる事務所の所在地の司法書士会の会員となるほか、その他の地域に従たる事務所を設けたときは、その所在地の司法書士会の会員にもなる(同法第58条第1項、第4項)。
司法書士倫理 司法書士の使命としての国民の権利擁護・公正な社会の実現を果たすため、司法書士としての基本姿勢を制定した倫理規範。平成14年の司法書士法の改正により司法書士の職務範囲に簡裁代理権等関係業務が入ることになったことを機に、日本司法書士会連合会によって策定された。
資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面 資本金の計算の過程を明らかにし、当該資本金が、会社法(平成17年7月26日法律第86号)及び会社計算規則(平成18年2月7日法務省令第13号)の規定に従い計上されたことを、会社の代表者が証明した書面。この証明書の添付を要する登記としては、会社の設立、募集株式の発行、剰余金の資本組入れ、合併、会社分割、株式交換、株式移転等が挙げられるが、株式会社及び合同会社の設立登記及び合同会社がする資本金の額の増加による登記については、出資財産が金銭のみの場合、当分の間、添付を要しないとされている。
資本等取引 法人税法上、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配(法人税法第22条第5項)。
資本取引 (1)資本金の増加・減少等、企業の資本に関する取引。資本取引では、収益(所得)は生じない。(→損益取引)
(2)居住者(本邦内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人)と非居住者(居住者以外の自然人及び法人)との間の預金契約や、居住者と非居住者との間の金銭の貸借契約等、一定の対外的な金融取引(外国為替及び外国貿易法第20条)。資本取引には、居住者による外国法人の発行に係る証券の取得等の一定の行為(対外直接投資)が含まれるが、外国投資家等による会社の株式の取得等の一定の行為(対内直接投資)は除かれる(外国為替及び外国貿易法第20条、第23条第2項、第26条)。資本取引を行った者は、一定の場合、当該資本取引の内容、実行の時期その他の政令(外国為替令)で定める事項を財務大臣に報告しなければならない(外国為替及び外国貿易法55条の3、外国為替令(昭和55年10月11日政令第260号)第18条の5)。
事務管理 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)が、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法で、その事務を管理すること(民法第697条)。緊急事務管理の場合においては、管理者の注意義務が軽減される(民法第698条)ことから、その反対解釈として、通常の事務管理においては、善良な管理者の注意義務があると解釈されている。管理者は、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときを除き、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるようになるまで、事務管理を継続しなければならない(民法第700条)。
指名委員会 委員会設置会社において設置される委員会で、株主総会に提出する取締役、会計参与の選任及び解任に関する議案の内容を決定する機関(会社法第404条第1項)。(→報酬委員会)(→指名委員会)
指名債権 債権者が特定されている債権。証券を伴って流通することが予定されていない債権。貸金債権、売買代金(請求権)や家賃(支払請求権)などがそうであり、一般に債権というと、指名債権であることが多い。指名債権譲渡の債務者に対する対抗要件は、譲渡人の通知又は債務者の承諾であり、第三者へ対抗するためには、その通知又は承諾が確定日付ある証書によるものであることを要する。(→無記名債権)(→指図債権)
指名債権質 債権質のうち、指名債権を目的とするもの。目的物として、火災保険金請求権、信託の受益権、賃借権、貸付金債権、銀行預金債権などが挙げられる。指名債権質の第三債務者に対する対抗要件は、第三債務者に対する質権設定の通知、又は、第三債務者の承諾であり、その他の第三者に対抗するためには、この通知又は承諾が確定日付ある証書によってなされることを要する(民法第364条、第467条)。(→指図債権質)(→抵当権の債権質入)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
Copyright (c) 2008 Global Legal Office All Rights Reserved