【登辞林】(登記関連用語集)


[こ]

公債 国、地方公共団体が財政上の必要から負担する債務。通常は、そのうち証券形態で発行されるものをいう。国の公債を国債といい、地方公共団体の公債を地方債という。

工作物 土地上、もしくは地中に人工的に作られた定着物(電柱、橋、井戸)。建物も工作物であるが、独立の不動産である。建物に該当しない工作物は、民法上、動産と扱われる(民法第86条第2項)。

工作物責任 土地の工作物の設置又は保存の瑕疵により他人に損害を生じたときに、工作物の占有者又は所有者が負う責任。一次的には、工作物の占有者が損害を賠償する責任を負うが、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償する責任を負う(民法717条1項)。判例は、この所有者の責任は、無過失責任であるとしている。損害の原因について、他にその責任を負うべき者がいるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる(民法第717条第3項)。
国家賠償法(昭和22年10月27日法律第125号)第2条に同趣旨の規定があるが、対象物は「道路、河川その他の公の営造物」であり、民法の「土地の工作物」に比べ、その範囲は、はるかに広い。
(→不法行為)(→監督義務者の責任)(→使用者責任)(→注文者の責任)(→動物の占有者の責任

合資会社 会社の構成員である社員が、無限責任社員有限責任社員から成る会社。無限責任社員は、会社の債権者に対して、直接、無限、連帯責任を負うが、有限責任社員は、出資額を限度として、直接連帯責任を負う。有限責任社員の出資は、金銭その他の財産に限られる。又、定款に別段の定めがある場合を除き、有限責任社員も無限責任社員同様、業務執行権及び代表権を有する。(→合同会社)(→合名会社

公示催告 法律の定める場合一定の場合に、裁判所が一定の期間を定め、不特定、不分明又は所在不明の利害関係人に対して、権利、請求又は生存を裁判所に届出ること、及び、もしその届出をしない時は、失権、証書の無効又は失踪宣告をする旨の警告付で公告される裁判上の催告(非訟事件手続法第141条以下)。この催告と、除権判決又は失踪宣告を含めた手続きを公示催告手続という。

公示送達 当事者の住所・居所など送達場所が知れない場合や外国で嘱託による送達ができない場合に、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示する方法により行う送達(民事訴訟法第110条、第111条)。公示送達は、掲示を始めた日から2週間を経過することによってその効力を生じ、外国においてすべき送達についてした公示送達は、6週間を経過することによってその効力を生ずる(民事訴訟法第112条)。同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は掲示を始めた日の翌日に効力を生じる。民法上の公示による意思表示と異なり、相手方を知ることができない場合は、公示送達によることができない。

皇室典範(こうしつてんぱん) 昭和22年1月16日法律第3号。皇室に関する法律(日本国憲法第2条及び第5条) 

公示による意思表示 表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときに、公示の方法によってする意思表示。この公示は、民事訴訟法の公示送達の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載して行う。裁判所が相当と認めるときは、官報の掲載代えて、市・区役所、町村役場等の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。公示による意思表示は、原則、最後に官報に掲載した日又はそれに代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる(民法第98条)。
根抵当権者が根抵当権の元本確定請求通知を送付する際、根抵当権設定者(物件の所有者)が行方不明の場合は、公示による意思表示を用いることができる。(登記研究676号182頁「登記簿」)

公衆用道路 不動産登記規則99条に規定されるの土地の地目のひとつで、一般交通の用に供される道路。道路法(昭和27年6月10日法律第180号)に規定する道路であるかは問わない。(不動産登記事務取扱手続準則68条)。地方税法348条2項5号により、固定資産税は非課税とされるが、この土地を所有権移転登記する際の登録免許税は課せられる。

工場財団 抵当権根抵当権を含む)の目的とするために、1個又は数個の工場に設定されるもので(工場抵当法(明治38年3月13日法律第54号)8条1項)、工場に属する土地、建物、工作物、機械、器具、地上権、賃貸人の承諾あるときの物の賃借権、工業所有権、ダム使用権等によって組成される(工場抵当法第11条)。工場財団の設定は、所有権保存の登記をすることにより効力を生じ(工場抵当法第9条)、所有権保存の登記後6ヶ月以内に抵当権設定の登記をしない時は、その効力を失う(工場抵当法第10条)。工場財団は、1個の不動産とみなされ(工場抵当法第14条第1項)、抵当権者の同意を得て賃貸する場合を除き、所有権及び抵当権以外の目的とすることはできない(工場抵当法第14条第2項)。工場が数個の登記所の管轄に跨り、又は、工場財団を組成する数個の工場が、数個の登記所の管轄内にあるときは、申請により、法務大臣、法務局長、又は地方法務局長が指定する(工場抵当法第17条第2項、不動産の管轄登記所等の指定に関する省令第1条)。

工場財団抵当 1個又は数個の工場について、工場に属する土地又は建物、工作物、地上権、賃借権等により組成される工場財団を設定し、当該財団を目的とした抵当権根抵当権を含む)(工場抵当法第8条)。

工場図面 工場財団の登記において、工場の配置などを記載した図面(工場抵当登記規則(平成17年2月28日法務省令第23号)第22条)。工場図面は、工場ごとに備えることを要し、工場に属する土地(又は地上権・賃借権の目的である土地)及び工作物の方位、形状、長さ、重要な附属物の配置の記録を要する。
誰でも手数料を納付して、写しの交付、閲覧を請求することができる(工場抵当登記規則第41条、不動産登記法第121条第1項、第2項、不動産登記令第21条第1項)。

工場抵当 (1)工場抵当法(明治38年3月13日法律第54号)に規定する、工場等を目的とする抵当権で、工場に属する土地又は建物を目的とするもの(工場抵当法第3条)と、1個又は数個の工場について、工場に属する土地又は建物、工作物、地上権、賃借権等により組成される工場財団を設定し、当該財団を目的とするもの(工場財団抵当、工場抵当法第8条)の双方。
(2)工場に属する土地又は建物を目的とした抵当権(根抵当権を含む)(工場抵当法第3条)。民法上の抵当権の効力が及ぶ範囲は、当該抵当権の設定された土地、建物及びその附加一体物であるのに対し(民法第370条)、工場抵当においては、その効力は備え付けられた機械、器具その他工場の用に供する物に及ぶ。この抵当権設定の登記を申請するときには、機械、器具等の情報をも提供しなければならない。

工場抵当法第三条目録 工場抵当法第3条の規定による、工場に属する土地又は建物に抵当権を設定する場合において、その土地又は建物に属する機械、器具、その他工場の用に供するものが記載された目録。工場抵当においては、抵当権の効力は、原則、工場に属する土地に備え付けた機械、器具、その他工場の用に供するものに及ぶが、抵当権設定の申請人が目録に記載すべき情報を提供し、登記官により、目録が作成されることにより、目録記載物についても、その効力を第三者に主張することができる。

公証人 当事者その他の関係人の嘱託により、次の事務を行う権限を有する(公証人法(明治41年4月14日法律第53号)第1条)者。
1.法律行為その他私権に関する事実についての公正証書の作成
2.私署証書の認証
3.定款の認証
4.電磁的記録の認証
電磁的記録に関する事務は法務大臣の指定した公証人(指定公証人)が取り扱う(公証人法第7条の2)。公証人の手数料については、公証人手数料令において定められている(公証人法第7条第3項)。公証人は、法務局又は地方法務局の所属とされ、法務大臣が任命し、その属すべき法務局又は地方法務局を指定する(公証人法第10条、第11条)。裁判官(簡易裁判所の判事を除く)、検察官(副検事を除く)、弁護士の資格を有する者は、試験及び実地修習を経ずに公証人となることが可能である。公証人は法務大臣の指定する場所に役場を設け、その所属する法務局又は地方法務局の区域内についての職務を執行する(公証人法第17条、第18条)。
公証人が証書を作成するには、嘱託人の氏名を知り、かつ、面識があることを要し、公証人が嘱託人の氏名を知らず又は面識が無い時は、印鑑証明書の提出をさせるなど、人違いでないことを証明させなければならない(公証人法第28条第1項、第2項)(→公正証書遺言)(→任意後見契約)(→確定日付)(→日本公証人連合会

公証役場(公証人役場) 公証人が職務を行うために、法務大臣の指定した地域に設置した施設(公証人法18条1項)。公証人は原則、公証役場において職務を行うことを要するが、事件の性質により、又は、法令に別段の定めがある場合には、公証役場以外の場所で職務を行うことができる(同法18条2項)。
地名のあとに「公証役場」「公証人役場」と続く名称のものが多いが、「○○公証センター」「○○公証人合同役場」という名称のものもある。日本公証人連合会のホームページに全国の公証役場の所在地が掲載されている。

公序良俗 公の秩序または善良の風俗。社会の秩序。公序良俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とされる(民法第90条)。不法行為をすること、もしくはしないことを目的とする法律行為、賭博行為、人権を害する行為等がこれに当たる。公序良俗に反した行為の無効は誰に対しても主張することができ、履行請求をすることも出来ないが、その行為に基づき、何らかの給付をした者は、その返還を請求できない(民法第708条)。
暴利行為も公序良俗に反すると言えるが、一般に、高利の金銭消費貸借については、それ自体は無効とされず、利息制限法違反の問題として処理される。いわゆる「ヤミ金融」(違法高利業者)については、その貸付は、公序良俗に反し無効であるので、借主は何ら支払う義務を有せず、又、受領した元本は、不法原因給付として、返還することを要しないとされ、平成20年6月10日に最高裁判決も出ている。

公信力 動産の占有、不動産登記等、権利の存在を推測させるような外形を信頼して取引した者に対し、真実の権利が存在しない場合にも、有効に権利取得を認める効力。日本では、動産の占有については、民法第192条の規定により、公信力が認められる結果、動産の占有者が真実の所有者でなかった場合でも、その者から動産を譲り受けた者は、所有権を取得することが可能となるが(即時取得)、不動産の登記には公信力が認められていない結果、登記上の所有者が真実の所有者でなかった場合、その者から不動産を譲り受けた者は所有権を取得することができない。

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